今年もよろしくお願いします。
新春からこんな記事ですが自戒の意味も含めて書きたかったので書きます。
- コメダ珈琲店でものすごい勢いでノートパソコンのキーボードを叩く人を見て
- 職場にもいる打鍵音がうるさい人々と、ピアノ音楽表現との共通点
- 打鍵音がうるさい人はピアノを弾いて矯正するべき理由
- 自分でもピアノを演奏してみた、がしかし…
- 終わりに…もっとしなやかにタイピングを行うためにピアノを弾こう
コメダ珈琲店でものすごい勢いでノートパソコンのキーボードを叩く人を見て
先日近所のコメダコーヒに、新しく買ったMac Book Pro 2016 Lateを持っていって(ドヤ顔をせずに)ちょっとした書類を作っていた時の事。
後ろの席の方から、「パチパチパチパチ…ッターン!」というパソコンのキーボードの打鍵音がものすごい音で聞こえてきました。
どうやら、僕と同じようにカフェで仕事をしている人のようで、その打鍵音から察するに、その方のパソコンは僕と同じMac Boook Proの最新版のようでした。このパソコンは、一部で「打鍵音がパチパチうるさい」と不評なのですが、なるほど、こうやって他人がバシバシとパソコンのタイピングを行っている時の音を聞いていると、「確かにうるさいなぁ…」と思いました。
そもそも自分も含め同罪ですが、「カフェでパソコンを持ち込んで仕事をする」という事自体悪い事のように言われていますが、それはさておき、「自分のタイピングの音も他人に迷惑を掛けているのでは?」と心配になりました。
そこでその場で、打鍵音を小さくするべく優しくキーにタッチしてみました。
確かに打鍵音は小さくなりました。しかしながら、優しくタッチすると、打ち間違いが多々発生しました。周囲を気にしてキーに付かず離れずの微妙なラインでタイピングしているためか、キータッチで押すべきキーが「抜けて」しまうのです。
下記のように、「n」のキーが打鍵漏れになってしまうために、「しまうのです」が「しまうおです」になってしまうおです。
- しまうおです。←しまうのです。
- simauodesu←simaunodesu
このような状況に何度も陥り、その度に打ち直していたので、書類作成に時間がかかりました。
職場にもいる打鍵音がうるさい人々と、ピアノ音楽表現との共通点
このことがあってから、職場でもタイピングの音が気になるようになってしまいました(仕事に集中しろよ自分…)。
職場のパソコンはデスクトップタイプで、キーボードのキーが深いので、「カシャカシャ」といった音がします。しばらく観察したところ以下のタイプがいたので、ピアノ音楽との関連も交えて、列挙します。
- エンターキーだけうるさい人
いわゆる「ッターン!」という感じで改行キーを叩く人ですね。このような人々は段落の区切り、あるセンテンスの区切りで「やり切ったぞ」的な感じでエンターキーを叩いています。ここでエンターキーはある種、「作業のリズム」を作ることに加担しています。
ピアノ音楽で言えば、最後の音がフォルテで決然と終わる、ある種「英雄的なタイプ」ですね。
下記の画像はラフマニノフの「楽興の時op.16」の4番です。
最後の小節、スフォルツァンドに加え、フォルテが4つもついていますね。曲全体を通してこれ以上の大きな音を出す表象記号が無いことから、盛り上がって「この曲がこの部分で終わる」という事を示しています。
- deleteキー連打、もしくはスペースキー連打する人
とにかく同じキーを連打している人を見かけます。この人々は、タイピングのミスを修正するために猛烈にデリートキーを押して文字を消している人、或いは変換機能がしょぼいのか、目指すべき文字に変換できない人が、猛烈にスペースキーを押して変換文字を探している人です。
いずれもスマートとは言えませんが、強いて言えば、ピアノ音楽で言うところの「同音連打」という事になるでしょうか?
ピアノで同音連打をする時は一音一音指を変えて打鍵するのですが、音が自然と大きくなってしまう場合が多いです。
下記の画像はラヴェルの「クープランの墓」からトッカータです。
最初の2小節は同音連打ですが、これを綺麗に揃えて小さい音(この場合ピアニッシモ)で弾くのは難しいです。
- パソコンのキーボードに一旦指を滑らせてから打鍵する人
これは僕の職場にいるある女性だけの癖かもしれませんが、パソコンで打鍵する前に一旦キーボード上に「シュッ」と指を滑らせて「リズム」を作っている人がいました(この人はとても性格が良い人なので個人的には許せます(笑))
もし深く打鍵すれば「あqwせdrftgyふじこ」となる、アレですね。
癖なので仕方がないと思いますが、この方もこの動作をすることでキーボードの定位置(FとJに人差し指がくる)を確認して、かつこれから始まる打鍵の準備をする「リズム」を作っていました。
ピアノ音楽で言うところの「グリッサンド」ですね。
下記の動画はプロコフィエフの10の小品op.12より第7番「ハープ」です。
(グリッサンドは0:55あたりから)
- 最初から最後までとにかく打鍵音がうるさい人
「カシャカシャカシャカシャ…」とにかく絶え間なく大きな打鍵音が、リズムも悪く、強弱も無く鳴り響く…。
これは実は僕の事です(笑)こういった人はまず、「ブラインドタッチ」が出来ていません。いちいちキーボードを見ながら打鍵するので、指の「定位置」という概念が無いのですね。
定位置に指を置いておけば何も指を上から振り下ろさなくても「押し込む」という動作だけで打鍵が出来てしまいます。こういう事が出来る人のキーボードの打鍵は比較的静かで、かつ速いです。
実はこのことはピアノを弾く上で最も重要な事なのです。これが出来ていない人は(僕も含めて)最初から最後まで何の強弱も無いので音楽的でもありませんね。
つまり該当するピアノ音楽は「無し」です。
- 番外編:打鍵音が全く聞こえない人
キーボードの打鍵音が全く聞こえない人。仕事していないんじゃ?そもそもその人自体が存在しているのか?僕が見ているのは幻か?
強いて言えば音楽で言うところの「ジョン・ケージの4分33秒」でしょうか?(笑)
打鍵音がうるさい人はピアノを弾いて矯正するべき理由
上記にも記述しましたが、打鍵音がうるさい人は基本的にブラインドタッチが出来ていない人が多いです(僕も出来ていないです…ハイ)。
ブラインドタッチの基本は
「指の位置を定位置に置いて、打鍵するキーと対応する指を決めておく事、叩くというよりはむしろ押し込むといった動作に近い事」
だと推測されます。
まさしくこの能力はピアニスト、ピアノを弾く人に要求される能力であり、ピアノを弾く上での基本とされる能力です。
ピアノ初心者の指の動きを見ていますと、ある音を弾く前にその音の上に指が準備されていない事が多いです。特に跳躍と呼ばれる、今ある手のポジションから離れている鍵盤を打鍵する場合に多いです。
跳躍の音型での初心者の動きは指だけを離れた音に持っていこうとしますが、プロのピアニストを見ると、まず手そのものを離れた音の位置に素早くもっていき、その後安定した指で当該の音を打鍵します。
例として、ショパンのノクターン第8番op.27-2の第一小節ですが(下記画像)、プロの演奏を見ていると、左手の一音目の小指でレのフラットを弾いた後に素早く手のポジションを右側に移動して、その後、二音目のファの音を親指で静かに打鍵します。
僕のような素人がやると、一音目を弾いた後に親指だけをファに向けて猪突猛進で向かっていってしまい、結果として「大きな、汚い音」が出てしまいます。
もう一つ、打鍵をする上で注意があります。出来るだけ鍵盤(パソコンのキーボード)から指を離さないようにする事です。
ピアノ初心者はこれが出来ないことが多いです。ある指を使って打鍵した時に、他の指が鍵盤から離れてしまう事によって他の指による次の動作が遅れるとともに、鍵盤から離れた位置から指を振りおろす形になるので、「大きな、汚い音」が出てしまいます。
ピアノを弾く上で大切な基本的な動きは、下記の画像のように鍵盤に全ての指を置いておき、
中指だけ打鍵をしようと思ったなら、中指だけを動かして、叩くというよりはそのまま押し込む感じで打鍵をします。その際、他の指はポジションが変わらないまま、つまり動かさないのです。こうする事で、例えば次に薬指で鍵盤を打鍵するといった際に、薬指が鍵盤から離れていないので遅れず、スムースに打鍵できます。(下記の画像)
もっとも、この動作をマスターするためには「指の独立」が重要です。初心者は薬指とか小指を動かそうとすると他の指がつられて動いてしまったりします。
そこで、以前のエントリーでも紹介した
ピシュナ 60の練習曲 解説付 (坂井玲子校訂・解説) (Zenーon piano library)
等で練習する事を強くオススメします。
以前のエントリー
(注:もちろんこういった指の動きは「基本」なので、実際にピアノを弾くときには様々な音の出し方、弾き方があります。上から振り下ろして渾身の力でフォルテシモを出す、といった事もあります。しかし、基本的には上記のような動きが出来ないと、ピアノは弾けないと考えます)
このように、パソコンのキーボードのタイピングと、ピアノの打鍵には深い関係があります。
どちらも、キーボードなり鍵盤から指を離さず、指が吸い付いたような形が基本となります。どの指でどのキー(鍵盤)を打鍵するかも、あらかじめ決めておきます。
自分でもピアノを演奏してみた、がしかし…
さて、そんな事も踏まえて、正月の1月2日から、ストイックな僕はピアノのあるスタジオに行って、自分の演奏を録画してきました(暇だという説もある…)。普段は家に電子ピアノしか無いので、スタジオにあるグランドピアノを見ると正月早々テンションがあがりましたよ。
そして出来た動画がこちら
(頑張って犬の絵も描きました。でも今年は酉年でしたね…。ニワトリを描くべきでした)
曲はショパンのノクターン第8番 op.27-2です(最近こればっか取り上げています汗)
まぁ、小さい頃バイエルで挫折して、大人になってから再開し、現在独学なのでこんなもんでしょう。恥を忍んで動画をアップしました。
今回、ノクターンという比較的「静かな打鍵」が要求される曲を練習してみて、発見が沢山ありました。
- あまりにも静かに弾こうとすると、音が鳴らない(タイピングで言えば、タイプすべきキーが漏れる)
- 素速く指を動かす箇所では、指の独立が出来ていないため音が大きく、乱暴になってしまう(タイピングでも同じ)
- 全体の構成が頭に入っていないため、次の音を探してしまう(タイピングで言えば、どの指でどのキーをタイプするか決まっていないのと同じ)
まぁ、無理矢理ピアノとタイピングを結びつけた感がありますが(笑)、やはり似ているとも思いました。
終わりに…もっとしなやかにタイピングを行うためにピアノを弾こう
何というか、タイピングの成果物は「文章」であって、ぶっちゃけ打鍵音がうるさくても周りが認めてくれればOKなわけです。流石にカフェ等では顰蹙ですが…。
しかしながら、ピアノの場合、成果物は「音楽」であり、打鍵の強弱がそのままダイレクトに成果物に影響します。表現とか、芸術といった問題も解決しなくてはなりません。
つまり、ピアノの方が単位時間あたりに処理すべき事柄が圧倒的に多いのです。
ここで、今までの事を総括して次が成り立ちます。
タイピングができればピアノが出来るとは限らないが、ピアノが出来ればタイピングが出来る(異論は認めます)
ピアノが出来るようになれば、カフェとかでパソコンを使う時にも小さな音でかつ高速でブラインドタッチが出来るようになるでしょう。
パソコンのタイピングがうるさいあなたも今日からピアノを弾いてみませんか?
読んでいただきありがとうございました。